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819中国は見る(453)世界中が中国を汚している(下)

日本教授:全世界在染中国

地球問題として考えなければいけない

007 それではこれらのリスクをわれわれはどう引き受け、そして、どう対処すべきだろうか? 大前提として考えるべきは、不当に安く設定された石油価格に基づくグローバル経済という“虚構”から脱することだ。 そしてできるだけ近場から、エネルギー、水、食料を調達するという「地産地消」を基本とする。 各国がリスクを分散的に吸収できる体制を世界全体でつくりながら、並行して中国問題を地球全体でソフトランディングさせる方法を考えねばならない。

有限、かつ局在化した資源である石油への過剰依存をリセットし、20世紀型のグローバル経済を少しずつ真の意味での地球経済のパラダイムへと広軌転轍(ブロードバンド化)していく。 その流れの中で、爆発寸前の中国ストレスを少しずつ緩めていくのである。

具体的に日本が何をすべきか考えた時、その一つは京都議定書で採用されたCDM(クリーン開発メカニズム)の活用だろう。 CDMは、外国で共同事業を行ってCO2を削減した場合、その削減量を自国の削減量として加算できるというもの。 たんにお金でCO2を買う排出権取引より、地球の富を増やす優れた制度設計だ。

このCDMプロジェクトの一つとして、日本のある電気メーカーが提案しているのが、省エネ型の電球を中国に普及させるというものだ。 試算によれば、中国の3億5千万世帯が平均8個くらいの電球を省エネ型に替えた場合、その省エネ効果は驚くべき削減量である。

2003年にアメリカで出された環境リスクに対する国防総省の報告書(いわゆるペンタゴン・レポート)では、「環境問題はテロ以上のリスクである」と明言されている。 2020年ごろには異常気象や環境変動によるリスクが増大し、経済的な被害もさることながら、大量の環境難民が世界中で生まれる。 これを見ても、中国の環境リスクをソフトランディングさせるべく、日本が税金の一部を振り向けてでも国策として中国の環境負荷の軽減に共同で取り組むのは、きわめて自然といってよい。

中国問題のソフトランディングが地球と日本の安全保障に直結している現代の状況を考えれば、真剣な検討を要すべきものだ。 中国と共同でエネルギーの供給・生産を行い、十年以内に中国の環境問題やエネルギー問題を緩和するシナリオをつくる。 それが日本として最大の地球への貢献であり、同時に日本自身の問題を解決することにもなる。

いずれにしても日本、中国、韓国を含めた「東アジア環境共同体」として捉えなおすグローバルな視点の確立が急務である。 状況はもはや共同資源としての環境や食料・水・エネルギーを持続可能なかたちで共同管理するシステムをつくらなければ、どうしようもない段階にまで進行している。

また環境汚染や資源の問題では、「日本は被害者」という論調が多いが、加害者の部分がまったくないともいえない。 端的なのはゴミ輸出の問題で、とくに家電のサイクルが短くなるにつれ、廃棄される量がどんどん増えている。 もちろんある程度リユース・リサイクルはされるにしても、トータルで見れば中国の環境負荷を一部で高めている面もあることは否定できない。

このほかに、「炭素リンケージ(連鎖)」の問題もある。 たとえば、日本でCO2排出を制限しようと環境税などを課すと、中国などCO2削減規制のない国に生産を移転する企業が出てくる。 鉄にしても、最終的な高度な精錬過程は日本国内だが、それまでの過程はますます中国で行われるようになる。 その結果、日本国内ではCO2が削減されても、地球的にはエネルギー消費やCO2排出量が増えてしまう。 この問題を解決するには国単位の規制だけでなく、域内全体、あるいは地球単位で、削減のための合理的な制度設計が求められるべきだ。 負荷を中国に押し付けるのではなく、地球経済の問題として、すべてを考えていかなければならない。

ボイコットしている場合ではない

40年前、日本は東京オリンピックを契機に高度成長をひた走った。 同時にオリンピックが分水嶺となって、いろいろな構造的問題を抱えるようになった。 1960年には80%ほどあった食料自給率が、40年で40%にまで落ち込んでしまった。 水も東京では多摩川や地下水などを使っていたが、オリンピックを契機に90%近くを“遠方”の利根川に依存するようになった。 日本の上下水道システム全体が、巨大なコストを要し、膨大な石油や伝奇に依存せざるをえない。 きわめて脆弱性の高いシステムになってしまった。

中国もまた、かっての日本が辿った道を歩もうとしている。 北京オリンピックを前に食料自給率を低減し、世界中から食料とエネルギーを買い集める方向に向かっている。 水にしても、「南水北調」ということで、揚子江の水を北京にもってこようとしている。 ただし北京オリンピックの場合、時代のパラダイムが東京オリンピックとはまったく異なることに目を向けるべきだ。 1960年代は、グローバル経済と国際貿易の促進が効率的な手段に思えた。 だが今は石油のコストや地球環境への負荷からグローバル経済そのものが生産的ではなく、逆に大きなリスクの対象にすらなっている。 中国が日本のような構造問題を抱えるとすれば、更にそのリスクは計り知れず、これを放置するわけにはいかない。

もはや中国製品をボイコットしたり、北京オリンピックでの大気汚染や水不足を他人事のように心配している場合ではないのだ。 中国の状況を地球問題と捉え、いかにソフトランディングさせるか。 これが今、われわれに突きつけられている課題なのである。

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